最後は、英語学習に関してよく話題になる、「臨界期」についてお話ししたいと思います。
では、まず「臨界期」とは何か。
簡単に言うと、
人間はある一定の年齢を超えると、完全に言語を習得することは不可能で、その一定の年齢のことを、研究の中では臨界期と呼んでいます。
例えば、日本のプロ野球選手が、メジャーに行き、そこで子供ができ、アメリカでその子供が育った場合、子供の方が親よりも英語が堪能になるということはよく耳にすると思います。
最近の研究結果では、人間は
思春期頃までに言語の習得を始めないと、その言語を完全に習得することはできない
と言われています。
実際に日本人の場合、日本語に関しては、生まれてすぐに習得し始めるため、完全に習得はできています。
しかし、英語に関して言うと、ほとんどの人が中学あたり(思春期、または思春期が終わるあたり)から学習をし始めるため、英語を完全に習得できていないということになります。
おそらくこの事実を知ってしまうと、
「なんや。じゃあもう今思春期すぎてるねんから英語の勉強なんかしても意味ないやん」
って思うかもしれません。
でもそれは大きな間違いだということをこの章ではお話ししたいと思います。
この臨界期の説で学者の人たちが想定しているレベルというのは「ネイティブのレベル」だということを必ず頭に入れておいて下さい。
言い換えると、この臨界期の説で主張されていることは、
「思春期を過ごした後に学習を始めてもネイティブにはなれない」
ということです。
この違いを理解して学習するかしないかでは大きく変わっていきます。
何が言いたいかというと、
「英語学習の開始時期がいつであろうと、ネイティブに近いレベルには誰でもなれる」
いうことです。
僕も実際に英語を本気で勉強し始めたのは大学2年生の時からです。
それまで受験のために、無理やり単語をローマ字読みで覚えたりする以外、全く英語で話したりすることもありませんでした。
それでも今現在7年ほど勉強を続けていますが、英語の先生になれたり、海外の大学に入れるほどの英語力を身につけることができています。
実は、思春期を超えてから学習する方がいい点も幾つか報告されています。
例えば、思春期を超えてから英語の学習を始める方が、習得する時間が早いということが言われています。
これは、すでに一つの言語を習得した後なので、ものの概念をすでに知っている+文法などのルールを意識的に「学習」することができるためです。
つまり、自分の頭を使って理解していくことができるというわけです。
思春期以前に言語を習得する場合には、頭を使って学習するわけではなく、頭に入ってきた膨大な量の言葉をもとに「自然に」習得していく必要があるため、時間がかかってしまいます。
しかし、やはり、言語の学習を始めるのならば早いに越したことはありません。
それは、人間には寿命があり、人生には限りがあるからです。
上でも言いましたが、臨界期を超えた後に学習を始めても、ネイティブにはなれないとしても、誰でもネイティブに近いレベルになることはできます。
ですが、そのレベルになるための時間は、人それぞれ全く異なるということを頭に入れておく必要があります。
(これは僕の頭の中にあるセンス仮説にも関わってくるので、興味のある人はこちらで読んでみてください)
ある人は5年間でそのレベルに達することができるかもしれませんし、ある人は30年かかるかもしれません。
しかし、それは実際にその人が学習をスタートさせてみないとわからないことです。
そう考えていくと、もし仮にあなたがそのレベルに達するために30年必要な学習者だった場合、、20歳で学習を始めれば、50歳頃にはそのレベルに達することになります。
それが40歳からのスタートだった場合には70歳になったころにやっとそのレベルに達することができます。
70歳になってからそのレベルに達するよりも、50歳の時点でそのレベルに達する方が、残りの人生で英語を使える時間が多くなるのは明らかですよね。
そして、もう一つ頭の中に入れておかないといけない大切なことは、「日本人の中で、ネイティブレベルの英語力が必要な人なんてほとんどいない」ということです。
たくさんの人が今や英語を話せるようになりたいと考えていて、その理由も様々です。
旅行にいきたい、道案内をできるようになりたい、外国の友達が欲しい、ビジネスで使いたい。
しかし、上で挙げたような理由を満たすのに「ネイティブレベル」の英語力になる必要なんて全くありません。
自分の目標があるならば、それのために特化した勉強をすることが一番の近道なんですね。
ビジネスで使いたいならビジネス英語を勉強して使えるようになればいい。
そして、実際にビジネスで使えるようになれば、「ネイティブレベル」でなくても、目的は果たせます。
なので、この臨界期の話でぼくが一番言いたいことは、
「ネイティブレベル」を一つの目標として持つことはいいことですが、その目標のせいで、自分の目的を見失わないことが一番大切だ
ということです。
「結局ネイティブレベルになれんのやったら、あきらめるわ」
っていうのがいちばんの典型です。
ネイティブレベルにならずとも、英語の学習をスタートさせることで、あなたの目的を果たす英語レベルには必ずなれます。
そして、その目的を1秒でも早く達するために、英語学習を1秒でも早く開始することがいちばん大切なことだと言えます。
そして、諦めずに英語を勉強し続けることが、臨界期うんぬんよりも、一番の英語習得の近道だと言えます。