では、あなたの英語学習に影響を与える要因のひとつ、母語の転移(影響)について、簡単に説明したいと思います。

人間が第二言語を学ぶことは、自分の母語を学ぶ時とは様々な面で変わります。

その中でも、一番大きな違いは、「すでにひとつの言語を習得している状態」だということです。

例えば、テニスと卓球を想像してみてください。

初めてテニスをする場合、ラケットの握り方や、素振りの仕方など多くのことをひとつずつ知っていく必要があります。

しかし、テニスを始める以前に卓球の経験があったとします。

テニスと卓球には似ている点が多くあります。

例えば、ボールの回転のかけ方などは非常に似ているため、卓球を経験している人は、ボールの回転のかけ方を、卓球を経験していない初心者よりも早く習得することができます。

言語の習得もこれと同じことが言えます。

自分の母語と似ている項目に関しては、第二言語での習得も早くなります。

英語の場合だと、所有格の”‘s”などがそれにあたります。

日本語では「トム本」

英語では”TOM‘s book”

使い方がほとんど同じです。

なので日本人はこの所有格の”’s”の習得が、他の国の人々に比べて比較的早い段階で習得されるという研究結果が出ています。

これをプラスの影響ということで、正の転移と呼んでいます。

しかし、一方で似ているからこそ、母語での癖を矯正しづらくなることも起こります。

上の例からわかるように、所有格の”‘s”は習得しやすい一方で、所有を表す”of”は習得しづらくなります。

日本語で所有を表す「の」は、「物」に対しても「人」に対しても関係なく使うことができます

「トムのカバン」「山の頂上」など。

しかし、英語の所有格の”‘s”は「物」に対しては使えません

“The mountain’s top”は間違えなんですね。

正しい形は”the top of the mountain“です。

しかし、日本語では「トムのカバン」と「山の頂上」の使い方が同じため、非常に間違いやすい文法事項になります。

また単語の意味に関しても母語の影響はあります。

例えばsmartという単語。

日本語では、(特に大阪のおばちゃん)細い人を見た時「あんたスマートやなぁ」と言います。

が、英語のsmartには「細い」という意味はないため、”You are smart.” というと、「あなたは頭がいいですね」の意味にしかなりません。

その他にも、日本人が苦手な/l/と/r/の発音。

これらも日本語の発音には存在しないため、習得しづらい物になります。

っというように、日本語を知っているからこそ起こってしまう、マイナスの影響のことを負の転移と言います。

これらの正の転移、負の転移を意識しながら英語学習をすることで、日本人が特に注意すべき点や、学びやすいものを初めのうちに始めることで、習得を実感し、さらなるモチベーションにつなげることも可能になります。