英語を効率よく学習していくためには、学習者要因を無視することはできません。
まず、学習者要因とは、各学習者持っている個人的な要因のことをさします。
大きく分けて2種類の学習者要因、内的要因と、外的要因の二つがあります。
言葉の通り、内的要因とは、自分の中での要因、例えば、動機付け、個性、知能・知性、言語適性、学習者スタイル、学習開始年齢などのことを指します。
一方の、外的要因とは、学習者がどのような条件のもとで第二言語を学習するかという学習者を取り巻く環境のことを指します。
例えば、学習方法、学習時間などがそれに当たりますが、一番影響するものは、学習場所・環境です。
学習者要因の影響を理解することで、より効率的な学習方法を見つけることができるので、今回はこの学習者要因について細かく見ていきましょう。
目次
内的要因
動機付け
内的要因で一番簡単に変えることのできるのは、この動機付けです。
動機付けとは、あることを行うさいに、それをやり遂げようとする気持ちのことを指します。
例えば、海外の大学で勉強したいから英語を勉強する、ということや、大学受験のために勉強する
など、が簡単な例になります。
もちろん動機づけが強ければ強いほど学習に結びつくのでもちろん動機付けの強さが一番重要なのですが、ここでは動機の種類についても簡単にお話ししたいと思います。
かつては、動機付けには2種類、道具的動機付けと、統合的動機付けあると言われていました。
道具的動機付けとは、例えば、自分の出世のため、受験のため、高得点を取ることでお金がもらえるなど、実際の利益を得ることを目的としたもののことです。
この動機付けの場合には、英語そのものや、文化そのものに興味があるから勉強しているわけではないことがわかります。
一方の統合的動機付けとは、今上で書いたような、利益を目的とするものではなく、英語学習を通して、英語圏の人の文化を理解したい、その背景となる思想などを理解したいなど、言語の背景にあるものを理解することを目的にしたもののことです。
例えば、アメリカ映画がとても好きで、それをもっと理解するために英語を勉強する、アニメが好きだから日本語を勉強するなどがこの統合的動機付けに当たります。
ではなぜこのように、動機付けが2種類に分けられたかというと、かつては、統合的動機付けを持っている方が、上級者になりやすいという研究結果が多かったからです。
例えば、実際に僕がよく感じることは、「アニメが好きな外国人の人たちは、かなり日本語を上手に話せているなぁ」ということです。
実際に外国の友達が多い人は同じようなことを感じているのではないでしょうか?
そのような人たちはよく、
「アニメ見てたら話せるようになった」
とよく言っています。
このことを考えると、統合的動機付けが確かに強いものだと感じます。
一方で、
「海外赴任があるためにどうしても英語を話せるようにならないといけない」
という人も多くいます。
そのような人でも、必死で勉強して、海外赴任で成功している例は沢山あります。
つまり、道具的動機付けからでも成功する人は多くいるという研究結果も多く出てきているんですね。
っというように、現在では、どちらの動機付けがより有利かということは特になくなってきています。
では、もう一度動機付けの必要性に戻ってみましょう。
上でも書きましたが、動機付けが必要な理由は、動機付けによって実際に学習するという行動につなげることができるということです。
逆に言うと、どちらの動機付けを持っていようと、実際に学習に繋がらなければ意味がないということになります。
なので、まずはもう一度、
なぜ英語を勉強しているのか?
英語を勉強してどうなりたいのか?
英語ができるようになることでどうなるのか?
何がきっかけで英語を勉強し始めたのか?
などを具体的に再確認して、紙に書いてみてください。(*紙に書くことが大切です!頭で考えるだけだとぼやけた答えになりますよね。)
この時道具的動機付けか、統合的動機付けかは別にどちらでも構いません。
自分の英語学習の動機を再確認することが一番の目的です。
もう一度学習の目的、動機を再確認することで、やる気もあがり、学習につなげることができます。
個性・性格
2つ目の内的要因は、個性・性格です。
ズバリ、現在の研究の中で言われていることは、
「明るく、積極的で、おしゃべりな人」が一番第二言語の学習に向いていると考えられています。
なので、そのような性格に近づけていくことで英語学習の効率を上げることができると言えます。
例えば、おしゃべりの人の場合、たくさん話したいという気持ちから積極的に英語を口に出そうとしますよね。
一方、無口の人の場合、おしゃべりの人と比べて、英語を発する量がかなり減っていきます。
アウトプット仮説のところでも書きましたが、英語の習得にアウトプットは不可欠です。
なので、これだけでも、おしゃべりの人の方が効率良く習得できることがわかりますよね。
では、具体的にどのような個性・性格が学習に影響を与えるのか見ていきましょう。
自己尊重
自己尊重とは、「自分の能力や価値などに対する自分自身の評価のこと」です。
自己尊重の高い人ほど、特にスピーキングでは高い能力を身につけることができると言われています。
自信を持てない人は失敗を恐れて、英語を使う機会が減ってしまいますよね。
また情意フィルター仮説の観点からも学習効率が下がってしまうとも言えます。
抑制
抑制とは自分を守るために、心に壁を作ってしまうことです。
自分に自信がない場合には、例えば、「こんなこと言うと嫌がられるかな?」というような気持ちなどから、心に壁を気づいてしまうことがあります。
これが起こってしまうと、上でも書いたように、コミュニケーションの機会が減ってしまい、英語習得はマイナス効果になってしまいます。
不安
不安とひとことで言っても、様々な不安が、学習に影響を与えると言えます。
例えば、「他の人とうまくコミュニケーションができるだろうか」、という不安や、「テストで失敗したらどうしよう」、そして日本人に一番多い、「間違えたこと、文法的に間違っていることを言ったらどうしよう」
という不安など様々なものがあります。
一見不安は完全に悪いことと思われがちですが、適度な不安は、学習に役立つことがわかっています。
例えば、テストが不安だと、勉強しますよね。
また、英語圏の人達はよく、「きっちりとした文章を話すので、日本人の英語は理解しやすい」と言います。
これも、間違えてはいけないという不安から、間違えないように意識して文法的な文章を話している結果ですよね。
しかし、やはり日本人は間違いを気にしすぎる傾向があります。
なので、どちらかというと、間違いを気にしないようにしながら、気楽に話したりすることが、日本人にとっては適度な不安を持ちながら学習をすることにつながると言えます。
リスク・テイキング
リスクテイキングとは、危険を冒してでも物事に取り組もうとする姿勢のことです。
このリスクテイキングは、先ほどの不安と関連するところがあります。
例えば、リスクテイキングが高い人は、積極的に英語を使おうとする一方で、間違いを気にしなくなる傾向が強くなるため、間違いをおかす可能性が高くなります。
一方で、リスクテイキングが低い人は、英語を使う機会が少なくなるため、英語を使用する機会が減ってしまし、英語習得が促進されない可能性が出てきます。
つまり、不安と同じように、適度なリスクテイキングが必要ということになります。
曖昧さ耐性
曖昧さ耐性とは、自分が今まで学んだり、身につけてきたことと違う考え方や、ルール、方法などにであった時に、それらのことをどれだけ素直に受け入れられるか、という寛容さの度合いのことです。
例えば、中学校の時に「 anyは疑問文か否定文でしか使われない!!」と教えられ、I can eat anything.という文を見た時に、受け入れられるかということです。
この例に関しては、「anyは疑問文か否定文でしか使われない」という説明自体が間違いなのですが、英語も言語である以上、全てが文法通りであるとは限りません。
(anyについ的になる方はこちら)
なので、そのような文法通りにいかないことを素直に受け入れられるかということも、言語を習得する上では必要な力になっていきます。
感情移入
感情移入とは、相手を理解するために、相手の立場になって物事を考えたりすることにより、相手の考えや気持ちを理解することです。
他人とコミュニケーションをとる際に、相手の気持ちや考えを理解することで、円滑にコミュニケーションを進めることができます。
やはり、英語も言語であり、コミュニケーションツールであるため、相手とのやりとりを円滑に進められれば、それだけ習得の進度も早くなると言われています。
外向性・内向性
外向性、内向性とは、性格のことです。
外向性の高い人は、一般的に、社交的と言われ、積極的に他の人とコミュニケーションを取ろうとします。
したがって、会話の機会も増え、スピーキング能力の学習に関しては、非常に効果的な性格と言えます。
一方で、内向性の高い人はいわゆるシャイな人で、他の人と関わることをあまり好みません。
したがって、スピーキング能力の学習に関しては、習得進度が遅れてしまいます。
英語は言語である以上、コミュニケーションのために使うということが非常に大切です。
なので、できるだけ、外向性を上げていき、積極的に英語を使っていくことが、特にスピーキング能力を上げていくには一番の学習法だと言えます。
(文法力や、読解力などは、相手と関わらなくれも伸ばせるため、内向的な人でも全く問題はありません。)
知能・知性
一般的には、「頭のいい人の方が、言語の習得も有利だ」、というイメージがあると思います。
が、実はこれは半分正解で半分は間違いです。
どういうことか。
実際の研究結果で、頭のいい人は、読解能力や、文法学習、語彙学習に関しては有利だと言われています。
しかし、スピーキングやリスニングの能力に関してはあまり関係ないという結果が出ています。
おそらく日本語で考えてみるとわかりやすいと思います。
頭のよさ悪さにかかわらず、日本人全員(病気の人などを除いて)が日本語を聞くことも、話すことができますよね。
しかし、全員が完璧な国語の読解力や、文法知識を持っているわけではありません。
つまり、話す、聞く、に関しては、頭の良さにかかわらず、誰でもできるようになるということなので、自分の頭の悪さを原因に英語ができない、という考えは、スピーキングに関して言えば単なる言い訳に過ぎないということです。
言語適性
外国語学習に向いているかどうかを判断するためのModern Language Aptitude Test/MLATというテストがあります。
このテストでは、
1 新しい音を記憶し、文字に表せるか
2 微妙な文法の違いに気づくことのできる敏感さ
3 具体的な例から、一般的な文法法則を見つける力
4 丸暗記する力
の4つがテストされます。
言い換えると、この4つの力が高ければ高いほど、言語学習に向いていると言えます。
学習スタイル
学習スタイルとはどのような方法で学習をするか、例えば、目から学習するのか、耳から学習するのか、などの学習方法のことです。
例えば、耳からの学習が得意な人は、CDなどを使い、音から学習することにより、効率的に学習できます。
一方、視覚からの学習が得意な人は、テキストなど、本を通して学習する方が効率的だと言えます。
いずれにせよ、自分に一番あった学習スタイルを見つけることが、一番大切だと言えます。
学習開始年齢
これは、臨界期の部分で詳しく話しますが、いつ英語の学習を始めたかということです。
結論から言うと、
「早く始めれば始めるほど、生涯で学習できる時間が増えるため良い」
ということです。
なので、今もし本気で英語を学習しようか迷っているなら、今すぐ始めてください。
1秒でも長く勉強すれば、その分レベルは上がりますよね。(詳しくは臨界期で)
外的要因
学習場所・環境
一番大きく、英語学習に影響するのは学習環境だと言えます。
学習方法や、学習時間などは、内的要因の学習スタイルでも述べたように、自分のベストな学習方法、1日で学習に使える時間を考えることで、学習の効率化を図れます。
が、この学習環境に関しては、少し難しいところがあります。
一般的には、英語を学習する環境には2種類あり、一つは、第二言語環境、もう一つは外国語環境と言われています。
第二言語環境とは、習得しようとする言語を、授業以外でも使う必要のある環境のことを指します。
例えば、カナダなどでは、英語が第一言語ですが、フランス語も生活の中で使う必要があるため、カナダ人はフランス語を、第二言語環境で学んでいるということになります。
一方で、外国語環境とは、習得しようとする言語を、授業以外で使う機会がない環境、ということになります。
日本での英語学習がその代表例ですよね。
今現在、日本では英語を使わなくても生きていけます。
英語関係の仕事に就いたり、友達などに英語を話す人がいない場合には、英語を授業以外で使う機会は、自分から探さなければありません。
この違いから明らかなように、第二言語環境で言語を学習する方が習得には効率的だと言えます。
しかし、日本で学習する場合には、どうしても外国語環境での学習になってしまうため、例えば積極的に国際交流パーティに参加したり、旅行している人に声をかけてみるなど、日常で英語を使用する機会を探すことで、習得の進度を早めることができます。
っというように、それぞれの性格、環境に関しても、英語学習の効率化に影響してきますので、自分で意識して変えていける部分は、少しずつ変えていってみてください!
そうすることで、英語学習の効率を上げることができます!